コモチミミズトカゲ

コモチミミズトカゲ

学名:
Trogonophis wiegmanni

英名: Checkerboard Worm Lizard

分布:モロッコとその周辺の島
コモチミミズトカゲ分布図

全長:
20~25㎝程度? ほとんど20㎝までの個体が多いです。

特徴:名前に「トカゲ」とついていますが、トカゲではありません。トカゲでもヘビでもなく、ヘビ・トカゲとは独立した第3の有鱗目の「ミミズトカゲ」です。決して「ミミズ」と「トカゲ」で切り離さないでください。胎生種のようです。

その容姿は、四肢がないのでヘビのようなのかというと、実物を見れば一目瞭然ですが、そうではありません。色や鱗は別として、名前のとおりミミズの体型です。動きもヘビのような蛇行でなく、ミミズのような蠕動運動で進みます。ですからもちろん後進もできます。

体色は白地にゴマダラ模様で、英名のようにチェッカーボードのようなツートンカラーです。頭部は茶色~黒茶褐色で、体のまだらも同様の色です。

ウロコは長方形でタイルを貼ってあるような感じです。ウロコは環状に配列されており、ウロコとウロコの間にはわずかながら隙間があり、皮膚が露出しています。そこから水分補給をすることもも多少は可能なようです。
コモチミミズトカゲ ウロコ

目は地中棲ということもありかなり悪いようで、明るさというか光を感じる程度しか機能していないようです。ですから目の部分を覆っている鱗は完全な透明ではなくてやや白濁しています。もちろん個体差もありますし、脱皮直前かどうかでも違います。
コモチミミズトカゲ 頭

舌はヘビや多くのトカゲに見られるような二股タイプの舌をしています。アゴの力は強力らしいですが、人間に噛み付くようなことはありません。
コモチミミズトカゲ 舌


総排出口はかなりうしろの方にあり、尻尾は2㎝程度(全長比10%程度)しかありません。ですから全長のほとんど(85%くらい)は胴体ということになります。
コモチミミズトカゲ 総排出口

とてもおっとりした動きのため、ハンドリングなどもたやすくできます。指に巻き付いたりする感触はなかなか良いものです。
コモチミミズトカゲ ハンドリング

尻尾は鉤(カギ)状にしてモノに引っかけたりすることができるため、地中に潜る時などに反力をとる支点の役目を果たしているようです。
コモチミミズトカゲ しっぽ

2007年末に日本に初入荷しました。入荷当時は2万円近くしましたが、2008年後半には5千円台の価格も見受けられるようになりました。入荷当初は物珍しさとミミズトカゲの仲間では最も安価と言うこともありすぐに売り切れ続出でしたが、ブームはもう終わったようでなかなか売れなくなりました。ショップでも在庫を抱えているところは安売りするところもあります。それでもわずかながら卸業者が輸入しているようなので、今後も少量の流通はするようです。流通量をセーブすることで価格を維持しようとしているとも考えられますが、いずれにしてもミミズトカゲ自体かなりマイナーな生き物で、マニアックな人しか飼育しないと思われます。需要供給バランスからすると需要はほとんど無いようなものですね。



飼育環境:何匹飼育するかによるのですが、それほど大きな容器は必要ありません。45㎝クラスがあればベターです。高さよりも広さを重視した方がよいです。全く科学的根拠のない個人的な意見として1匹あたり300平方センチ程度あればいいのではないかと考えています。プラケ小で1匹、プラケ中で2匹、プラケ大で3匹、特大で4~5匹程度が目安? もちろんそれ以上の密度でも飼育は出来ます。

地中棲ですが、結構地表に出てきて、体をかなり垂直にもたげることが出来ますので、脱走に注意してください。頭部はかなり堅く、ちょっとした隙間に頭を突っ込んで意外に簡単に脱走する場合がありますのでしっかりした蓋は絶対必要です。
コモチミミズトカゲ 脱走

床材は浅くても飼育できないことはありませんが、地中棲ということで最低でも数㎝程度の厚みがあった方が落ち着きます。出来れば10㎝以上あると良いでしょう。トンネルを掘って動いている様子を観察しやすくなりますし、湿度管理もしやすくなります。下の写真はトンネル内のミミズを追いかけている様子です。
コモチミミズトカゲ 地中生活

床材材質はいろいろ使用できますが、ヤシガラ土・腐葉土などで問題なく飼育できます。黒土なども使えるでしょうが、乾湿を繰り返すと堅く締まります。硬い土壌であってもコモチミミズトカゲ自体は強固な頭部で掘り進むので問題ないようですが、ペットとしての飼育・観察には向かないと思います。乾燥しているとトンネル形状の保持が出来ない砂は避けた方がよいでしょう。

床材の湿度ですが、乾燥部分と湿っている部分を半分ずつと言うのが一般的のようです。ただ、どちらでも問題なく飼育できるようですので、あまりこだわらなくても良いようです。乾燥状態であれば水入れを常設しておいた方が良いでしょう。参考までに私の場合は床材全体が軽く湿っている程度で、表面がわずかに乾燥しているような状態がベストではないかと考えています。乾燥状態よりも過湿状態に気をつけた方が良いと思います。

生息地域の気象状況から保温はそれほど必要ないと思いますが、最適活動温度が18~28℃と言われていますので、最低20℃くらいはキープした方が良さそうです。もちろん一時的な低温なら耐えられます。しかし、意外に寒がりのようなので、冬期はパネルヒーターなどで部分的に25℃以上の部分があるほうが良さそうです。平たい石や樹皮などを床材表面に置いておくと、体温調整や湿度調整のためにそれらの上に乗ったり、それらの下に隠れていたりします。(下の写真上段は樹皮の上でくつろぐ様子、下段は水入れの下に隠れている様子。)
コモチミミズトカゲ 集団コモチミミズトカゲ 隠遁

地中棲なので紫外線やバスキングスポットは必要ないと思われがちですが、意外にもUVライトを照射することで活性化するようです。それにいくら地中棲とは言え昼夜の感覚をあたえることにより1日の生活リズムがきちんと確立できて良いので、一般的な照明、できればUVライト(UV5.0位のもの)を必ず点灯させておいきましょう。温度(熱源)はパネルヒーターからの供給で十分だと思います。



エサ・給餌方法:野生下では地中のムシやミミズなどを食べているようなので、コオロギやミルワームやハニーワーム、ローチなどを与えます。生き餌の方が反応は良いですが、置きエサでも食べます。慣らせばリザードフードやレプトミンも食べるようですが、いつもいつも食べるとは限らないのであまり人工飼料には頼らない方が良いです。意外に小食なようです。コオロギ、ハニーワームは食いが良いようです。やはり柔らかいものが良いのでしょうか?

カルシウムやビタミン・ミネラルなどのサプリメントを時々エサにふりかけて与えれば問題ないでしょう。

トカゲやヘビと比べると動きが緩慢なので、エサの捕食はかなり下手です。ですから、コオロギやローチなどの動きの速いエサを与えるときは、ダスティング時に良く振って気絶させたり、足をカットするなどして動きを制限しておいた方が良いです。視力が悪いので積極的に生き餌を追いかけるようなことは滅多にありません。顔の近くに偶然近づいたエサを捕食したり、コモチミミズトカゲ自身の掘ったトンネルにエサが入り込んだのを食べたりします。

某有名ショップのHPでは、手の上でも平気でエサを食べると書いてあったりしますが、それはよほど空腹の個体なのでしょう。確かに動きもゆっくりで物怖じしないように見えますが、私の経験からすると一般的にはそんなことはないです。

参考までに(前述の有名店とは別の)某ショップで半年以上キープしていた給餌方法は次の通りです。「エサは3日に1回 リザードフードを水でふやかしてサプリメントをつけて2本あげていました。」 もちろんコモチミミズトカゲ1匹に対してということのようです。また、毎回完食したかどうかは不明です。カビが生えやすいので、食べていなければ早めに捨てるようにしましょう。

コモチミミズトカゲの同一ケース複数匹飼育では、この給餌に一番神経を使います。与えたエサの数と減ったエサの数をきっちり管理した方が良いでしょう。個別のエサ食いが全くわかりませんのである程度大きくなるまでは個別飼育でエサ管理した方が、安心できます。



繁殖:胎生種なので直接子供2~6匹程度産みます。オスメスの判別は総排出口からうしろの尻尾を見て判断するのが一般的なようです。総排出口から先が急に細くなり短い個体と、徐々に細くなり少し長い個体がいます。私は前者がメスで後者がオスではないかと考えていますが、どちらがオスでどちらがメスかは各自で判断してください。下の画像であれば、左がメスで、右がオスということになります。
コモチミミズトカゲ オスメス判定
これも前述の某ショップでの判別方法ですが、「性別は尻尾が丸っこいのがメスですこし細くてとがっているのがオスになります。」ということで、私の判別と同様であることがわかります。

真偽のほどはわかりませんが、ショップで持ち腹個体が子供を産んだという話は聞いたことがあります。しかし、飼育個体の繁殖例はまだ聞いたことがありません。繁殖トリガーなど不明です。まずはしっかり飼育して大きく育てることを心掛けましょう。

参考までに、私の飼育しているコモチミミズトカゲ達の中からこんなスクープ写真がとれました。
日本初のコモチミミズトカゲ出産シーンです!
 
コモチミミズトカゲの出産
子供を直接産んでいるところです。



その他:海外のサイトに多少の論文などが掲載されていますが、生態についてはよくわからないことが多ようです。ケアシートのようなものはほとんど見たことがありません。

いわゆる「アタリ・ハズレ」ということもあるのかもしれませんが、丈夫で飼いやすい種類という割には突然死や、エサを食べなかったりと意外にむずかしい面も持ち合わせているのかなというのが個人的な印象です。特に細く小さな個体はそのような傾向があります。ミミズトカゲの仲間の中では格段に安価なコモチミミズトカゲではありますが、それでも死なれるとつらいものがあります。たいていの(ネット)ショップの売り文句として「丈夫で飼育も簡単、コオロギなどを与える」とありますが、本当にそうなのかと疑問視したくなることがあります。確かに丈夫だと言えば丈夫かも知れませんが、訳もわからず死んでしまうこともありどうも納得いかないことがあります。とにかく購入時には太くて大きい個体を購入した方が失敗が少なくて済むと思います。もちろん実物を自分の目で見て動きやエサ食いも確認できればベストです。

脱皮は土の中できれいに一脱ぎします。
コモチミミズトカゲ 脱皮殻

ブログではウイークデーのほぼ毎日記事を更新していますのでご覧ください。




参考文献:

Islas Chafarinas La geologia de un archipielago deseado por todos
(スペイン語) chaf_articulo01-1.pdf へのリンク 
         chaf_articulo01-2.pdf へのリンク 
         chaf_articulo01-3.pdf へのリンク
         chaf_articulo01-4.pdf へのリンク
         chaf_articulo01-5.pdf へのリンク
Body temperature regulation in the amphisbaenian Trogonophis wiegmanni
(英語) chaf_articulo02.pdf へのリンク

Fossorial life constrains microhabitat selection of the amphisbaenian Trogonophis wiegmanni
(英語) chaf_articulo03.pdf へのリンク

Chafarinas herpetofauna
(スペイン語) chafarinas_herpetofauna.pdf へのリンク

Studies on Amphisbaenids
(英語) Studies_on_Amphisbaenids.pdf へのリンク

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