ジャイアントミルワーム考(基礎編)

ジャイアントミルワーム

甲虫目:カブトムシ亜目 ゴミムシダマシ科 キマワリ亜科
学 名:Plesiophthalmus nigrocyaneus
大きさ:16〜20o
時 期:5〜10月
分 布:北海道・本州・四国・九州
特 徴:黒色で、脚が長いゴミムシダマシの仲間。成虫の体はコガネムシ類よりやや細長く楕円形で背中が盛り上がり腹面は平らで上翅には筋がある。体色は黒色から黒藍色のものと緑真鍮色のものなど地域によって大きく差がある。脚が、特に前脚が体長に比して長い。その脚の長さから枯れ木やくち木の上を早足で歩き回るのが、キマワリという名前の語源とされている。
生 息:雑木林の樹木の幹や倒木上、枯れ木などに集まる。都市郊外でもよく見られる普通種。幼虫は朽ち木の中で育つ。
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ジャイアントミルワームは、主に爬虫類や熱帯魚のエサとして使い、体長5cm前後ありコウチュウ目ゴミムシダマシ科キマワリの幼虫です。よくあるミルワームは主に小鳥用で体長2〜3pくらい。コウチュウ目ゴミムシダマシ科チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫です。

ストック方法は温度管理さえすれば比較的簡単です。底面積の広いプラスチックの衣装ケース等(例えば1sのワームならば縦40p×横30p×深さ20p以上)に、ふすま(小麦の皮をすりつぶしたもの)おがくず等をワームが隠れる程(3〜5p)程度敷き、風通しの良い日陰に置きます。気温は25℃前後が最適です。寒さには強いですが、暑さ、蒸れに大変弱いため30℃以上になると死んでしまいますので十分注意して下さい。親切心で野菜をたくさん与えすぎるとあだになる。棒のようになって☆になってしまいます。死ぬときは必ず硬く棒のようになってしまいます。

エサは野菜(かぼちゃの種のあたり、バナナの皮の裏側、農薬をかける間もなく育つ夏野菜)、リンゴの芯、爬虫類のペレットなど・肉・魚など何でも食べます。新鮮な野菜等葉ものがいいです。与えるのは一日おき位で良いでしょう。適量のドッグフードを水で芯がなくなる程度までふやかして与えてやると、カルシウム・ビタミン等の栄養バランスが取れやすくなるでしょう。餌を与えすぎて食べ残すとカビがはえたり、コナダニの発生の原因になるので食べ残しのない程度に注意して下さい。

水分は前述のとおり野菜を与えていれば充分です。普段は餌からの水分で十分なのですが、時々霧吹きで、ふすまの表面だけが湿気る程度に湿らせて下さい。

過密飼育だと蛹になりにくいです。もし蛹になったとして大抵蛹のときに共食いされてしまいます。成虫になると、防御のために強い匂いを出す。

市場ではジャイアントミルワームやスーパーワーム、ロイヤルミルワーム、ジャンボワームの名で呼ばれています。

ペットとしての価値は大した保温もなく冬を過ごさせることができるのは大きなメリットです。行動はフスマに潜ったり表面に出てきたり程度なので、あまり面白味がないかもしれません。楽しいのは、フスマの中をかき回してツルツルサラサラした虫を手にいっぱいすくい取ったりして遊ぶときくらいかも。元気が良いと艶々しているので、見ていて気持ち良い。

ちなみに1sで約1000〜1300匹程度です。1匹1gといったところですね。

エサとして与えるときには頭をつぶすとか、半分に切るなどしてカエルやヤモリが食べやすい大きさにしてあげる。強力なアゴによる心配をする人もいますが、レオパやゲッコーはカシュッ、カシュッとまず頭をかみ砕いて食べますので心配ありません。カエルのような丸呑みする生き物には、強力なアゴで胃を噛み破ってしまうという迷信が信じられていますが、そのようなことはありません。なぜなら水の中に入れればわかりますが、すぐに動かなくなってしまいます。ジャイアントミルワームだけのことではありませんが食べてくれるときと全くそっぽを向くときがあります。

土と腐葉土と朽木の飼育ケージに入れておいたほうが見違えるほど美しくなります。フスマの中で飼育してると粉っぽいのですが、腐葉土キープではそれが無いうえに何やら模様もくっきりしているようです。大したものを食べている訳ではないですが、つやつやくっきりしたその美しさに見とれるかも?

栄養価については、レオパの飼育の時にお世話になった「鱗(うろこ)ふぇち」(http://www.geocities.co.jp/HeartLand/4063/keeping/dust_loading.html)にこんなデータがあります。

昆虫をエサをする場合、与えるムシにはそれぞれ特異的な栄養の組成があります(表1)。まず、それを認識した上で爬虫類の嗜好だけでなく、目的にあった給餌が望ましいと思います。
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あくまでも冷凍サンプルですから生き餌の場合とは必ずしも一致しないはずです。栄養補充という観点からガットローディングというのが一般的ですが、ダスティングの方が効率よく摂取できるという意見もあります。ガットローディングに意味があるのかないのかは別にしても、エサのエサにもそれなりのエサをあげないと活きのいいエサにはならないです。ローディングよりもダスティング、もしくはローディング+ダスティングが良いと言うことです。

雑学として、昆虫はその昔は人間の食料としても利用されていました。今でもわずかながら蜂の子、イナゴなど昆虫料理というものがあります。ジャイアントミルワームも結構食べられているようです。昆虫料理研究(http://www.bekkoame.ne.jp/~s-uchi/musikui/musikui.html)でもよく料理に登場します。お腹が空いたらジャイミル料理はいかが?
(押し寿司 上に載っているのがジャイミル)
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(こちらはピザ 左にジャイミルがチーズに埋もれて)
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ジャイアントミルワーム しろたん.実践編

これから書くことは、私こと「しろたん.」の個人的な実践に基づく内容であり、これらの実践により生じた損害等について、当方は一切の責任を負いません。自己責任において実践して下さい。

生態やキープ方法など基本的な事項については「基礎編」を読んでいただくこととして、この実践編では何を書こうかと考えましたが、自分の思いつくままに適当に書いていくことにします。


ジャイアントミルワームのアゴ

エサとしてジャイアントミルワームを与えようとする時、誰もが最初に気になるのはあの強そうなアゴだと思います。ザ・カエルでは「大型のジャイアントミルワームは顎の咬む力が強く餌を丸呑みするカエルでは消化管内で穿孔する恐れがあるのでピンセットなどで頭を潰してから与えるようにします。」という記述があります。確かに朽ち木で育つことからそれなりのアゴの力があることは確かです。
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長時間袋や箱に入れておけばそれは咬み破って出てくることもあります。しかし、素手でジャイアントミルワームを触るとわかりますが、噛みつくようなことはありません。それにジャイアントミルワームを試しに水の中に入れてみて下さい。1分くらいでほとんど動かなくなり2分もすると死んでしまいます。(水につかってしばらくするとこのように動かなくなります。)
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カエルやゲッコーのお腹に入って長時間生き続けることはないのです。たかだか1〜2分で消化管を食い破られることなどありません。もしもジャイアントミルワームを与えて生体が死んだとすれば、それは与えすぎか体調不良、別の疾患等によるものだと考えて間違いないです。ゲッコーなどはきちんと頭をバリバリ咬んでから食べますので、わざわざ頭をカットしてから与えなくても大丈夫です。
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それに、頭をカットしてしまうとあっと言う間に動かなくなってしまいます。すぐに気が付いて食べてくれるヒキガエルであるとか、ピンセット給餌になれている生体でないと難しいかも知れません。結論としてジャイアントミルワームのアゴを心配する必要はありません。頭をカットしたり潰したりする必要もありません。

ジャイアントミルワームのアゴばかり注目されていますが、実際にはコオロギのアゴの力も相当で、かなりのものを噛み切る力を持っています。それに非常に攻撃的で捕まえると人の手を噛んできます。よっぽどコオロギの方が危険であることを誰も気がついていない?のか、コオロギ業界の陰謀で誰もそのことに触れないだけかもしれません。


ジャイアントミルワームの外皮

中身は白身の柔らかなモノで消化も良さそうですが、やはり外皮が硬そうで消化が悪いと思われがちです。この硬い外皮であるクチクラはキチンという多糖類が主成分で昆虫の外骨格を構成する生体物質です。確かにコオロギやハニーワームに比べると硬いことは間違いありません。しかし、このジャイアントミルワームの硬い外皮ですが、これまでの経験からいうとそれほど気にすることはありません。飼育している生体の調子が悪くなければほとんど消化されています。コオロギの頭や足もかなり消化が悪いです。特に羽はそのまま出てくることも結構あります。ちなみに、ソメワケササクレヤモリ、ロボロフスキースキンクヤモリ、ムーアカベヤモリ、ビブロンゲッコー、ハルマヘラジャイアントゲッコーに与えていますが、フンはジャイアントミルワームの形が残っていません。(最近のゲッコー達のフンです。ジャイミルしか与えていません。)
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ただ、体調が悪いとそのままの形で出てくることがあります。ハルマヘラジャイアントゲッコーを迎えたその日に与えたモノは輸送ストレスの影響か全く原型のまま出てきたことがあります。それ以降はきちんと消化されて出てきています。やはり低温では消化が悪いです。それから、カエルに与えた場合ですが、こちらも全く問題なく消化しています。たまに、外皮の一部と見られるものがフンに混じっていたりしますが、ほぼ完全に消化されています。ツノガエル、バジェット、ウッドハウスヒキガエル、アフリカツメガエルに与えていますが問題ないです。また、スネークヘッド(魚)にも与えていますが、こちらも全く問題ありません。低温での消化不良と生体の体調が悪い場合を除いて全く問題ないということです。

ジャイアントミルワームは通常頭が黒く、胴体は茶色っぽくて最後尾が又黒っぽくなっています。しかし、脱皮したての場合は、全身白くて外皮も柔らかいです。ゲッコーなどは白っぽい脱皮したてのほうが好きそうです。(右が白ワームで左がノーマルワーム)
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白っぽくてウニョウニョと動く方が食欲を刺激されるようです。1s買いだとそこそこいますが、100匹入りパックくらいであればたまにしかお目にかかれませんね。


ジャイアントミルワームの中身

ジャイアントミルワームに限らず、この手の完全変態する昆虫の幼虫というモノはチョウや蛾に代表される柔らかそうなイモムシ系と外皮が硬いミルワーム系がありますが、大抵中身は得体の知れない白っぽい物質がメインで中央アタリに黒っぽい内蔵があるという構造になっています。
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ジャイアントミルワームも例に漏れずそのような中身となっています。この白身に水分、タンパク質、脂質、ミネラル分等が含まれています。基礎編にも書きましたが、コオロギに比べると脂質が多いようです。いずれのエサを使うにしても一長一短はあるものです。コオロギのお腹に何が入っているかは解剖してみればわかります。アダルトのメスはたいていお腹が大きくなって産卵できる状態なので卵がたくさん詰まっていると思いますが、小さいコオロギなどたかだか知れています。食べるのであればジャイアントミルワームとかワラジムシ、デュビアの方がマシ?


ジャイアントミルワームの栄養

ジャイアントミルワームの栄養価については基礎編にあるとおりです。ローディングも大事ですが、やはり確実なのはダスティングのようです。私の場合は、夜行性ヤモリなのでビタミンD3なしのカルシウムパウダーを使用しています。昼行性の場合はビタミンD3ありを使いましょう。それに時々ビタミンパウダーも使います。ジャイアントミルワームのエサに工夫をしましょう。まずは野菜を与えてビタミンを蓄えてもらいます。それからドッグフードなどを水でふやかしてモノを与えてタンパク質、脂質、炭水化物などでローディングします。もちろん床材は腐葉土です。
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消化吸収してフンになって出てしまう前にエサになってもらえれば一番効率よくローディングできたことになります。いずれにしても、ジャイアントミルワームだけでは栄養に偏りが出ますし、飽きが来る場合もあります。そういう場合のために、ワラジムシやデュビア、そしてピンキーなども用意しておくことをお勧めします。出来る限りコオロギはやめましょう。と言うか、コオロギ地獄からの脱出がジャイアントミルワームを使う本来の目的であり、この講座の意義であります。


ジャイアントミルワームのエサとしての適用範囲

ジャイアントミルワームは大きいモノで5pくらいあります。普通のミルワームよりもかなり大きいです。
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こんな大きなモノはそれなりに大きな生体でないと食べられないのではないかと思われがちですが、意外にもソメワケササクレヤモリのヤングアダルトでも十分に食べてしまいます。やはり細長いということで小さい体の生体でも意外に食べられるのです。アダルトコオロギの2匹分くらいのボリュームがあるでしょうか。
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頭胴長6pのソメワケササクレヤモリヤングアダルト(しろたん.飼育個体で全長12pほど)であれば十分に食べられます。ベビーの頃はワラジムシやデュビアベビーを与えましょう。


ジャイアントミルワームの逆襲

さて、エサとなる運命のジャイアントミルワームですが、ピンセットで強くつかんだり、頭をカットしたり、ヤモリなどに噛みつかれて身をくねって必死に逃れようとする時に節々から液体を出すことがあります。普通ならばクサイ液体が出るのではないかと思うのですが、さにあらず。別に何ともありません。いつもいつも出すわけではありません。滅多に出しません。大した抵抗があるわけではありませんが意外と逃げ足が速いです。と言っても他のイモムシ系と比べればですが。万が一ピンセットで挟んでいたのを落としてイモムシ系よりは素手で触った時の感触が硬いので、ぐにゅっと柔らかくて気持ち悪い感触もなく、慌てて潰してしまうということもありません。アゴのところでも書きましたが、素手でつかんだところで噛みつかれることはありません。
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ジャイアントミルワームの逆襲など、所詮くねくねして逃げようとするだけです。滅多に液体を出す事もないです。


ジャイアントミルワームの寿命・消費期限

ジャイアントミルワームの寿命というか消費期限というモノについて考えた場合、100匹入りパックくらいであれば普通にキープして消費していけば使い切るまで大丈夫です。さすがに1s買いするとロスもそこそこ出てきますが、100匹入りパックよりも単価がぐ〜んと下がるので問題ないです。ちなみに私が買っているショップでは1sで1300匹くらいと言っていました。(写真はケースに移した直後です。すぐに腐葉土に潜っていきました。)
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小さめのものも混じっていますのでそんなものかもしれません。もちろんロスについては「ジャイミルスティック」のところで書いていますように有効利用します。基礎編のキープの仕方さえ間違わなければかなりの期間使えるということです。日々どれくらいの匹数を消費するかで購入単位を決めていけばよいでしょう。私の場合、1日平均に10匹くらい消費します。ですから10匹/日×5日/週=50匹/週となります。ちなみに1000匹だとすると20週、5ヶ月近くもちます。実際にはロスもありますし、日によっては大盤振る舞いでたくさんあげることもありますので、4ヶ月あるなしくらいですかね。


ジャイミルスティック

基礎編に書いてあるとおり、ジャイアントミルワームが死ぬ時は下の写真のように棒状に硬直して死にます。
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死んでしまうとゲッコーやカエルには使いづらいです。ほとんどの場合食べてくれませんので処分するしかありません。しかし、ただ捨ててしまうのは能がありません。そこで資源の有効活用です。大型肉食魚であればそのままの大きさで食べられるので魚のエサにしましょう。乾燥ミルワームならぬ乾燥ジャイアントミルワームとしてそのまま使えます。中型や小型魚の場合はすり鉢である程度細かくしてから与えるととてもよく食べます。アフリカツメガエルには2節ずつくらいにカットして与えると喜んで食べます。
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ワラジムシのエサとして与えてもいいですよ。ただし、湿度が高いと臭くなったりだにが沸く場合がありますのでうまく与えてください。


とりあえず、思いついたことを書いたつもりですが、まだこんな事について知りたいとか、もう少し詳しく書いて欲しいとか、ご要望がありましたら何なりとコメントして下さい。ただし、この記述はおかしい、間違っているというコメントは一切受け付けません。その理由は、この記事があくまでも私個人の実践に基づくものであり、それでこれまで私の飼育環境では一切の問題が生じていないためです。

ジャイアントミルワーム

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プラケに放し飼いにしていたモノがサナギになりました。
このまま成虫にしてもいいのですが、キマワリなどおもしろくもありませんので、
カエルにあげました。美味しそうに食べました。

ジャイミル正体現す!

別にどうって事はないですが、偶然見つけたのでアップしておきます。
これは、ムーアカベヤモリのプラケに入れてあった流木の中で成虫になって出てきたモノです。
野生のモノはもっとすばしっこいのですが、意外にのろまですぐに捕まえられました。それほど危害も加えていませんので、臭いニオイは発しませんでした。子供の頃はカブトやクワガタ取りに行くと邪魔者として見向きもされない甲虫ですね。
あえて成虫にして、繁殖を目指す必要はないですね。買ってきた方が圧倒的に安いです。
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独特のニオイ物質を出すためか、エサとしては余り使えないのがこの成虫君です。幼虫の頃はみんなよく食べるけれど、成虫は見向きもしません。
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