オオハサミムシの飼育を始めよう! 2020/10/30更新
 
注) 飼育については、オオハサミムシの場合について書いています。他種の場合、ここで紹介する飼育方法ではうまく飼えない場合が多々あります。
   ヒゲジロハサミムシやハマベハサミムシなどのマルムネハサミムシ科とオオハサミムシ科は累代繁殖飼育が簡単です。クギヌキハサミムシ科は難しい(もしくは不可能か?)です。


概要

ハサミムシは腹部の終端にハサミを持った昆虫で、長くて平べったい腹部は自由に動きます。捕まえようとすると、サソリのようにハサミを振りかざして威嚇します。ハサミは小さいですが、外敵への威嚇や攻撃に使われるほか、種類によっては食べ物となる小さな昆虫を捕まえるのにも使われます。ただし、クワガタのように強力ではありませんが、指を挟まれると少し痛く感じる程度でしかなく、ほぼ傷も付かないので安心してください。 ちなみにハサミムシのハサミは、バッタとかナナフシとかゴキブリなどのお尻に生えている尾毛が変化したものと言われています。

ハサミムシの生態として、独特な習慣、すなわち母親による卵と幼虫の世話をすることが挙げられます。ハサミムシの親の世話は、すべての種で知られているそうです。彼らは亜社会性で、非社会性な種は知られていないそうです。具体的には、親虫(メス)は巣穴に産んだ卵を外敵から守り、カビの発生を防ぐため、いつもきれいになめて清潔にしています。子虫が生まれると食べ物を与えて丹念に世話をし、巣穴の掃除も怠らない立派な昆虫です。ハサミムシの母虫は子虫が生まれてしばらくは全く食べずに子育てに専念し、子虫がある程度成長すると食べ物を捕りに出掛けます。中にはコブハサミムシのように母虫は全く食べ物を取らず、獲物を捕りに行くこともなく、子供に自分の体を食べ物として与え、子育てをする種類もいます。ちなみにオスは複数のメスと交尾するだけで、全く子育てにかかわりません(たぶん)。オスは仔虫の世話をしませんが、仔虫を食べる(共食い)こともしませんので、隔離する必要はありません。



ハサミムシの仲間の多くは夜行性で昼間は落ち葉や石、朽ち木の下など目立たない、やや湿度のある所にいることが多いですが、日中に花や葉っぱの上などで姿を見ることもあります。多くの人々は、ハサミムシを徘徊する害虫として嫌います。これはハサミムシの容姿やゴミに集まるなどのイメージが原因であると考えられます。しかし、ハサミムシは人間や動物に有害でありません(たぶん)。もちろん無毒です(たぶん)。中にはシロアリやイネの害虫であるメイガなどを好んで食べる種類もいて、益虫として扱われる場合もあります。ハサミムシの限られた種だけは、農作物または観賞植物を傷つけることがあるそうです。すなわち、植物の葉や花粉、果実なども食べるということです。

Wikipediaでは、次のように解説されています。
「ハサミムシ(鋏虫)は、ハサミムシ目(革翅目、Dermaptera)の昆虫の総称、またはその一種(Anisolabis maritima Gene)をさす。
革翅目(かくしもく):この目の昆虫は、腹部先端に角質の鋏を持っている。前翅は鞘翅になっており、また、ハサミムシやヒゲジロハサミムシなどではまったく無翅である。一般に肉食性が強く、草地や砂地などでダンゴムシ、鱗翅目の幼虫などを鋏を利用して捕食する。しかし草食のものや、洞窟でコウモリの糞を食べるものもいる。最大のハサミムシはセントヘレナオオハサミムシで、8cm近くになり、密林開発のため絶滅の危機にある。また、種による差を認めにくいため、同定は困難である。」
不完全変態で5回以上脱皮を繰り返し、その度に触覚の節が増えるらしいです。


種類

日本には22種類のハサミムシが生息しているようです。
河野勝行氏の日本のハサミムシリスト(http://cse.naro.affrc.go.jp/kohno/earwig/SpeciesList-e.html)を参照させていただきました。 (現在このページはリンクが切れています。
Arixeniidae [ヤドリハサミムシ科 (コウモリヤドリハサミムシ科)]日本で記録なし。
Hemimeridae [ハサミムシモドキ科 (ネズミヤドリハサミムシ科)]日本で記録なし。
Pygidicranidae [ムナボソハサミムシ科]
   Challia fletcheri Burr, 1904 [ムカシハサミムシ]
Diplatyidae [ドウボソハサミムシ科]
   Diplatys flavicollis (Shiraki, 1907) [ドウボソハサミムシ]
Anisolabididae [マルムネハサミムシ科]
   Euborellia annulipes (Lucas, 1847) [コヒゲジロハサミムシ]
   Euborellia plebeja (Dohrn, 1863) [キアシハサミムシ (コバネハサミムシ)
   Gonolabis marginalis Dohrn, 1864 [ヒゲジロハサミムシ]
   Gonolabis distincta (Nishigawa, 1969) [ミナミマルムネハサミムシ]
   Anisolabis maritima (Bonelli, 1832) [ハマベハサミムシ (ハサミムシ)]
   Anisolabis ryukyuensis (Nishikawa, 1969) [リュウキュウヒゲジロハサミムシ]
   Anisolabis sp.
Labiduridae [オオハサミムシ科]
   Labidura riparia (Pallas, 1773) [オオハサミムシ]
   Nala lividipes (Dufour, 1828) [ヒメハサミムシ]
Spongiphoridae [クロハサミムシ科 (チビハサミムシ科)]
   Nesogaster lewisi (Bormans, 1903) [クロハサミムシ]
   Labia minor (Linnaus, 1758) [ムインハサミムシ]
   Metalabella curvicauda (Motschulsky, 1863) [チビハサミムシ]
Chelisochidae [テブクロハサミムシ科 (ネッタイハサミムシ科)]
   Proreus simulans (Stal, 1860) [スジハサミムシ]
Forficulidae [クギヌキハサミムシ科]
   Timomenus komarovi (Semenov, 1901) [モモブトハサミムシ]
   Paratimomenus flavocapitatus (Shiraki, 1906) [キガシラハサミムシ]
   Eparchus yezoensis (Matsumura & Shiraki, 1905) [エゾハサミムシ]
   Anechura japonica (Bormans, 1880) [ヤマトコブハサミムシ]
   Anechura harmandi Burr, 1904 [コブハサミムシ (アルマンコブハサミムシ)]
   Elaunon bipartitus (Kirby, 1891) [スジハサミムシモドキ]
   Forficula tomis (Kolenati, 1845) [クギヌキハサミムシ]
   Forficula mikado Burr, 1904 [キバネハサミムシ (キバネクギヌキハサミムシ)]
   Forficula hiromasai Nishikawa, 1970 [ミナミクギヌキハサミムシ]

 ちなみに、西川 勝氏のページ(http://www.earwigs-online.de/JP/jp.html)によれば35種が記載されています。

地域にもよるでしょうが、身近で簡単に採集できるのはヒゲジロハサミムシかハマベハサミムシ(ハサミムシ)だと思います。石の下とか、畑とか、枯草とかゴミの下などを探せば簡単に見つかると思います。オオハサミムシは大きな河川の河原など砂地のところに生息していることが多いです。

 ↓ ヒゲジロハサミムシ


 ↓ キアシハサミムシ


 ↓ オオハサミムシ



性別判断

成虫のハサミムシの性別判断は意外に簡単で、ハサミの形が雄と雌で違い、ハサミの大きく湾曲したり大きな突起があったりするのがオスで、まっすぐでハサミの間があまり空いていなくて割と真っ直ぐなのがメスです。、またハサミの形状は種類を調べる時に大切な目安となります。

下の画像はコブハサミムシの例です。左からアルマン型のオス、中央はルイス型のオス、右はメスです。

無題
 ↓ オオハサミムシの例です。左側メス、右はオスです。 (簡単に見分けが付きます。)



オオハサミムシの生活史
(私の飼育下での場合)

「オオハサミムシの生活史に関する知見」(日本昆虫学会第73回大会・2013年9月15日)がどのような内容なのかよくわかりませんが、河野勝行氏のブログ「自然観察者の日常」(http://ohrwurm.cocolog-nifty.com/blog/2006/08/post_04c5.html )によりますと、オオハサミムシの自然下での生活史はあまりわからないとのことです。その記述は以下のとおり。

”オオハサミムシは汎世界的に分布しており、日本のハサミムシの中でももっとも普通に見られる種の一つだ。しかし、一年をどうやって暮らしているか、という点に関しては、信頼できる報告を見つけることができないという点で、やはりよくわかっていない種だと言わざるを得ない。・・・日本におけるオオハサミムシの生活史を明らかにしたいところだ。”

2020年10月でもまだわからないのでしょうか? 河野博士!

通常、活動期は春から晩秋までで、その間に繁殖します。秋から活動量は少なくなり、冬期に生き残っている個体は、地中深く巣穴を掘って、その中でじっとして(何も食べないと言うか、何も食べるものがない状態)そのまま冬越し(冬眠ではない)をします。冬越しした個体は、再び春には活動を始めます。繁殖活動を始めます。(これはあくまでも私個人が採集場所を観察してのものです。

飼育下においては、冬期に保温(加温ではない)すれば、通年活動し、繁殖も行います。保温しなければ、冬期は地中でじっとして、餌もとらずに越冬します。無理に加温せずに自然に任せた方が良いのではないかと思います。
ちなみにオオハサミムシは、関西地方の自然下では12月でも採集することができることもありますが、ほとんどは地中深くの巣穴でじっとしているので、採集は困難です。

オオハサミムシは、産卵してから約7-10日で孵化します(私の飼育下での場合)。




孵化後もしばらく(とある情報では1齢の途中まで)は、母親虫が餌を探して巣穴に持ち帰り、それを子虫たちに与える行動が観察できます。



こうして仔虫の世話をし、仔虫は母親虫に寄り添って行動していますが、孵化後10日ほどすると仔虫は母親虫から離れて完全に自由行動を取るようになります。

変態は親虫とほぼ同じ姿(翅がない)で脱皮して大きくなる不完全変態です。孵化後、何度か脱皮を繰り返し(脱皮回数については正確な回数は未確認)、およそ1~2ヶ月で翅としっかりしたハサミを備えた成虫となります。



成虫になるとまもなく交尾をして、1週間程度で産卵するようです。
1度産卵すると、仔虫が独り立ちするまでしばらく産卵しないようですが、成虫期間(2~3ヶ月程度?)に交尾・産卵は2回ほど繰り返されます。
産卵は春から夏にかけては2~3回行われます。
秋から活動量は少なくなり、生き残っている個体は、そのまま地中の巣穴で冬越しをします。
冬も加温すれば産卵するようですが、(暖房しない)室温に任せた無加温の場合、産卵はほとんどしないようです。室温が15℃以下(正確なデータは取得していませんが飼育している部屋の温度計で確認したところでの話)に下がらなければ、冬期でも産卵するようです。
うまく越冬すれば、翌年3月頃から繁殖活動を再開します。
(上記はあくまでも私個人が累代飼育を続けてきた時のデータです。)


飼育方法
注) オオハサミムシについて書いています。その他のハサミムシ(ハマベハサミムシ、ヒゲジロハサミムシなどのマルムネハサミムシ科を除く)の場合、ここで紹介する飼育方法ではうまく飼えないです。

1.容器
ハサミムシを容れる容器を用意しましょう。専用の飼育ケース(プラケ)が一番簡単で入手しやすいです。ハサミムシを2ペア(4匹)飼育するのであれば、Mプラケくらいで充分でしょう*1。もちろん広いに越したことはありませんが、大きくなると重くなるし、観察もしづらくなります。逆に小さい容器でも飼育はできますが、あまり過密な環境は避けた方が良いでしょう。あとで書きますが、若干の共食いもありますので気をつけましょう。理想は1つの容器に1ペアです。
*1)あくまでも私の個人的な目安です。
[プラケのサイズ(目安)]  
ミニプラケ:縦11センチ×横16センチ×奥9センチ、1.4リットル
小プラケS:縦13センチ×横21センチ×奥13センチ、3.5リットル
中プラケM:縦17センチ×横28センチ×奥17センチ、7.5リットル
大プラケL:縦19センチ×横32センチ×奥18センチ、12.6リットル

プラケ以外にもプリンカップや広口瓶など色々使えるものはあると思いますが、メンテナンスや観察のしやすさなどからプラケに劣ります。ハサミムシの飼育には高さよりも底面積が広い方がよいので、私の場合、直径15センチ程度の耐熱ガラス食器を流用しています。プラケとそれ以外の容器でそれぞれ一長一短ありますので、色々試して自分に合うものを探して下さい。最近ではダイソーの「ペットコンテナー」の大きいものを使うことにしています。理由は、「安い」、「軽い」、「割れない」、「フタができる」、「透明である」・・・。
参考までに、2020年10月現在は、フジコンのプレミアムブリードカップ860mlを使っています。
ハサミムシには無翅のものもいますが、羽を持っているものもおり、飛ぶことができます。それに、上からの落下物や容器を倒したりするおそれもありますので蓋は必需品です。


蓋には適当に穴を開けておきましょう。


 セッティングの一例



 2.床材
ハサミムシは基本的に床材を種類を選ばないので、たいていのものは使えると思いますが、オオハサミムシは砂が一番良いと思います。それ以外のハサミムシは種類によっては多少床材を選ぶものもいるかもしれませんが、砂か黒土、椰子殻土やピートモスを使えば問題ないでしょう。床材は適度に湿った状態が良いですが、水が浮くほど湿らすのは良くありません。黒土の場合であればよく言われる「強く握ってまとまる程度」の湿りがあれば大丈夫です。多少表面が乾いていても地中が湿っていれば大丈夫です。土は水を含ませたりすると締まる性質がありますので気をつけてください。
飼育ケースに(できれば加熱殺菌した)砂かヤシ殻土または黒土を3~5センチメートルほどの深さにいれます。
参考までに、手元にあった昆虫マットを使ったことがあります。これだと、水を含んでも堅く締まることもなく、ハサミムシが巣穴を掘ったりするのが容易です。
フルイにかけて細かい部分だけになったヤシガラ土を床材にするのもおすすめです。理由は、湿度管理がしやすい、霧吹きなどで水分補給をしても床材が堅く締まらない、プラケなどの壁面が泥で汚れないため巣穴の中の様子を観察しやすい、5センチほどの厚みでも軽いなどです。ただ、常時湿っていることから古くなるとカビが生えるなど腐朽が考えられます。

これまでの飼育実績からすると、オオハサミムシの場合、やはり砂飼育が一番成績がよいと感じています。これは、オオハサミムシの生息環境がもともと河原などの砂地であることによるものだと思います。ただし、湿った砂はかなり重くなりますので、取扱には注意が必要です。それに見た目には判りづらいですが、かなり砂も汚れます。水洗いするとこんなに汚れていたのかとびっくりします。砂はきれいに洗って消毒すれば再生可能なので一番経済的だと思います。ただし、前述のとおり重いとか汚れがたまるので洗うことが必要となります。観賞魚飼育じゃあるまいし、そんなことはイヤだという人には、ピートモスやヤシ殻土や昆虫マットをおすすめします。これだと使い捨てできますし、(お住まいの地域にもよりますが)燃えるゴミに出せます。それに軽いです。デメリットはと言うと、交換時に生体(特に子虫)をすべて回収できない場合があることでしょうか。1匹2匹のロスは目をつぶれるという人には良いのではないでしょうか。
最近では、ダイソーのヤシ殻土(圧縮ブロック)を使うことが多いです。理由は「安い」、「軽い」、「必要量だけカットして使える」、「湿度調整が簡単」、「燃えるゴミとして出せる」(自治体による)・・・。2020年10月現在では、水に戻すのが面倒なのでピートモスを使用しています。

これまでの飼育で床材交換は1世代ごと(仔虫が独り立ちした段階)に交換(新しくセットした容器に生体を移し替える)するのが望ましいと感じます。あくまでも個人の感想であり、この記述を適用したいかなる損害に対しても当方にその責は無いものとします。


参考までに、私の床材厚簡単設定方法を書いておきます。
オオハサミムシ飼育の場合、砂の厚み設定は大まかに言えば、砂の厚み+ハサミムシの全長+余裕高1センチ=容器の深さ以下になるようにします。

ですから求める床材の厚みは
床材の厚み=容器の深さ-ハサミムシの全長-余裕高1cm

深さ7cmの容器で、体長3cmのオオハサミムシを飼育するのであれば、
7cm-3cm-1cm=3cm
となり、3cm以下の厚みの床材となります。

ハサミムシの体長は成体の最大値ですよ。脱走防止の観点から余裕高はもう少しあった方が良いです。

飼育容器の深さに因りますが、床材は3センチ程度あった方が、巣穴を掘ったりするのに都合が良いで、ある程度深さのある容器で厚めの床材というのが良いと思います。
もちろん浅めの容疑も飼育は可能です。


3.アクセサリー  結論:不要(入れるメリットはない)
床材を敷き詰めたら、その上に平たい石やカブトムシなどに使う樹皮、落ち葉などをいれます。軽くて平たいものであれば何でも使えます。植木鉢の割れたものなどもいいです。石は重いのでハサミムシが下敷きになって死なないように気をつけましょう。 また、ハサミムシは巣穴を掘った床材を地表に積むので、その床材でアクセサリーが埋まってしまうことがよくあります。
極論ですが、アクセサリーなしでも問題なく飼育できます。何も入れない方が、床材に穴を掘って巣穴作りをするので観察向きです。樹皮や平らな石などを入れるとその下に巣を作って産卵することが多いので観察はしにくくなります。ですから、観察をメインとするならば何も入れずに、繁殖メインなら適度に入れておく方がいいでしょう。


4.水入れ  結論:不要
水をいれた小皿を土の中に埋めこみます。土の湿り具合によっては水入れを設置しなくても大丈夫な場合もあります。また、霧吹きすることによって水を与えることも可能です。私は砂、昆虫マット、ヤシガラ土などを使っているので、それらにたっぷり水分を含ませているので水入れは設置していません。 仔虫がいる場合は、脱脂綿や水苔、オアシスなどを使っておぼれないように注意する必要があります。

 ↓ 床材、植木鉢の破片、木片、貝殻を使ったエサ入れをセットした一例。


5.エサ(餌)
ハサミムシは動物食傾向が強い雑食性の昆虫なので、エサとしてけずりぶしや煮干、昆虫の死骸、熱帯魚のエサなどを小皿にいれて水入れとおなじように土を埋めこみます。植物性のエサも食べますので、野菜なども少し与えると良いでしょう。私は錦鯉用飼料「ひかり胚芽 沈下性」やカメのエサ「レプトミン」、トカゲのエサ「リザードフード」なども与えています。これだと動物質も植物質もとれ、管理がしやすいです。たいていのものは食べますので、何を与えてもかまいません。エサには困らないはずです。それほど大食漢ではありませんので、エサの量は少なめにし、必ず小皿などに入れ、エサが湿めってカビが生えたりしないようにしましょう。そのためこまめにチェックしてカビが生えたりしていたら交換しましょう。 私の場合、給餌間隔は通常2日に1回程度です。仔虫専用容器(仔虫だけを数十匹飼育)の場合はほぼ毎日です。
私のオオハサミムシ飼育では、エサは「乾燥川エビ」をメインに、その他を時々与えています。それで十分飼育繁殖できています。また、ミルワーム(幼虫・蛹)やハニーワーム(幼虫・蛹・成虫)を弱らせたりカットして与えると(特に外皮をカットして中身が出た状態にしてやると)非常に好んで食べますので、繁殖して幼体がたくさんいる時期にはとてもいいエサとなります。オオハサミムシの成体にはハニーワームを弱らせずに与えると、はさみを使った捕食行動を観察することができます。ガやチョウなど鱗翅目類は好んで食べます


6.導入 
コブハサミムシのように夏眠する種類を除いて、採集は、5~8月頃が見つけやすくていいでしょう。ハサミムシをいれて、飼育ケースに蓋をしましょう。採集時期にもよりますがサイズのそろったアダルトペアの導入がおすすめです。うまくいけばあっという間に交尾産卵孵化、そして幼虫の世話まで観察ができるかも知れません。私の場合、8月上旬にオオハサミムシのペアを採集して2週間で産卵しました。孵化はそれから数日以内に始まりました。初めてハサミムシを飼育するのでしたら大型で見栄えもするオオハサミムシが良いかと思います。自分で採集できない場合はショップやオークションを利用するのもひとつの手です。最近ではヤフオクでも出品されていることがあります。



ここでは基本的にオオハサミムシの飼育について記述していますが、ハマベハサミムシやヒゲジロハサミムシなら同様な飼育方法でも飼育可能ですが、クギヌキハサミムシやコブハサミムシなどはうまくいかないと思います。


7.注意点
・ 飼育ケースは直射日光のあたらない場所におき、ときどき霧吹きで床材を湿めらせましょう。
・ また、水やエサは、できれば観察も兼ねて毎日新しいものと取り替えてやるといいでしょう。 少なくともエサにカビが生えないようにしましょう。
・ 室内での飼育の場合、冬場でも保温などの必要はありません。屋外飼育する人は少ないと思いますが、屋外でも防寒程度で保温など要りません。
・ 床材はヤシ殻土かピートモスがよい。砂を床材としている場合は、時々砂を洗うことを推奨します。飼育頭数などにより汚れ具合が異なりますので様子を見て洗うと良いでしょう。私の場合、2ヶ月に1回くらいで洗っています。思いのほか汚れていることにビックリします。黒土などの場合は、お任せします。(私は土で飼育したことがないので申し上げられません。)
・ ハサミムシ飼育の最大の魅力である卵・幼虫の世話ですが、その観察はほどほどにしましょう。産卵後は母性が強く、たびたび様子を見たりすると卵や幼虫が危険にさらされていると思い、すぐにどこかへ移動し隠してしまいます。
・ ハサミムシは共食いをすることがあります。しっかりエサを与えていれば共食いの心配は少ないでしょう。私の経験から、親とその子供たちは一緒に飼育していても全く問題ないですし、何度か繁殖した後は、親は死んでしまうことが多いので、親子での共食いはほとんど無いと思います。しかしながら絶対と言うことはありません。体格差がかなりあると小さい方が食べられてしまうことがあります。また、しっかりエサを与えていても、自己防衛でハサミによる攻撃  をすることがあり、その時に傷ついた個体はみんなに食べられる運命にあります。ですから、確実に繁殖させたい場合は、体格差のある個体を同じ容器で一緒にしない方が良いでしょう。ということで、幼体は親離れしたら別容器に移した方が良いです。

8.繁殖

繁殖は特別なことをする必要はありません。ペアをそろえれば勝手に交尾をして産卵し、卵の世話、孵化などの様子が観察できることでしょう。ハサミが一番大きなオスが複数のメスと交尾するということなので、基本は1ペアずつ飼育するのが良いでしょう。オスを複数匹入れておいても、ハサミでケンカするだけです。ケンカの様子とか、母虫が子供を守る様子は観察できるかも知れませんが、それをするメリットはありません。

歩留まりよく子虫たちを成長させるには、孵化したての子虫を見かけたら、しっかりエサを与えることです。特に虫系のエサ、ミルワームとかハニーワーム、蛾などをこまめに(できれば毎日)与えることです。床材の下の方に巣穴を作って子虫たちを守っていますが、床材表面のえさ入れにエサを入れておけば、母親虫が巣穴までエサを運んでいきますので、わざわざ巣穴にエサを入れてやる必要はありません。そんなことをすると逆効果です。1センチほどになって自由行動する頃を見計らって、母親虫と離して、広い容器で飼育することをおすすめします。同一容器で親虫と仔虫をいつまでも飼育していると、ハサミで牽制し合って傷つき、知らないうちに全滅しているといったケースも見受けられます。共食いはほとんど無いですが、極端に飢餓状態の場合はあります。広い容器である程度育てば、選別(基本的に体の大きな個体をチョイス)して累代飼育に、残った個体たちは、控えとして飼育するなり、ヤフオクに出品するなり、ニワトリのエサにするなりします。

交尾の様子です。



メスが卵の世話をしています。


孵化したての幼虫です。



9.その他
ハサミムシの特徴であるハサミですが、時々ハサミのないハサミムシが生まれる場合があります。原因は色々でしょうが、飼育下ではある程度まで問題なく成長します。しかし、いつの間にか姿を見かけなくなります。弱い個体は淘汰されてしまうのでしょう。

ハサミムシに限ったことではありませんが、生体のの堅い部分、ハサミや胸部などに細かいダニがつくことがあります。ダニがつくと粉が吹いたようになり、ツヤが無くなったように見えます。放置していても 生体に悪影響はないようですが、見た目が悪いので拭き取るなどの処理をした方がいいと思います。このダニが一度発生すると、完全駆除はほとんど不可能です。幼体のうちに隔離するなどの措置をとってダニが幼体に移らないようにするのがベストです。根本的な防止としては、床材の湿度を低めにすることです。床材が砂の場合、表面は乾燥してさらさらしているけれども、表面の床材をどけると少ししめっている程度が良いでしょう。湿っているけれど極力低湿度、具体的にはハサミムシがトンネルを掘っても何とかトンネルが崩れないくらいが目安です。


ハサミムシには独特のニオイがあります。生体そのものというよりは環境全体に臭うのです。種類によってニオイの強さも違うようです。ニオイフェロモンなのでしょうか。


雑学

ハサミムシは英語でearwigと言うそうです。耳の虫とでも言うのでしょうか。諸説あるようですが、調べてみるとおもしろいかも?
ハサミムシは 徘徊する不快害虫として取り扱われることがあります。うろうろしているだけで害虫扱いです。確かに虫嫌いな人からすると家の中に入ってこられるのはとてもいやなものなのでしょうが、どちらかというと小さな虫を補食したりする益虫の一面もあるのですからそっと家の外へ出してあげればいいのです。
関西では「チンポキリ」とも呼ばれているそうですが、関西生まれ関西育ちですが、そんな呼び名を知りませんでした。( http://www.konchukan.net/pdf/kiberihamushi/Vol36_1/kiberihamushi_36_1_20-22.pdf


関連外部サイト

The Pages of Earwigs (Dermaptera) in Japan [Nippon no Hasami-Mushi] (http://cse.naro.affrc.go.jp/kohno/earwig/)
The Earwigs of Japan日本のハサミムシ(http://www.earwigs-online.de/JP/jp.html)
自然観察者の日常 Dermaptera (http://ohrwurm.cocolog-nifty.com/blog/dermaptera)
イッカク通信発行所>自然観察な日々 (http://ikkaku24.exblog.jp)

inserted by FC2 system